2024.01.30

男鹿市公共交通の持続可能性を高める新しいサービスの提案

男鹿市公共交通の持続可能性を高める新しいサービスの提案

秋田県男鹿市の公共交通システムが持つ課題について、収益や持続可能性、地域活性化の観点から、さまざまな新しいサービスを提案しました。

男鹿市における課題

男鹿市役所や関係者の方々から以下のような課題説明がありました。

男鹿市の公共交通システム(路線バス)は、2022(令和4)年の年間利用者数10万人を超えているものの、採算は非常に厳しい状況です。人口減少に伴う利用者減に加え、観光資源である「男鹿のナマハゲ」がユネスコ無形文化遺産に登録された直後に突如訪れたコロナ禍で、インバウンドを含めた観光客が激減しました。これにより収益をどのように安定させるかが大きな課題となっています。加えて、少子高齢化の影響によるドライバーの不足や、高齢者の乗客に対する配慮も重要な課題です。

これらの課題に対処し、安定した公共交通を提供することで、住民が安心して住み続けられる街をつくり、「交通と住民のサステナビリティ」を実現したいと考えているとのことでした。

グループワーク

受講生たちはフィールドワーク後、グループワークで課題を整理したり、事業構想のアイデアを出し合ったりました。

あるグループでは、地域の観光産業と公共交通の双方を支える方法として、観光客を効果的に取り込み、その収益をもとに既存の路線を維持できないかという観光資源活用のアイデアについて話し合っていました。

コミュニティ活性化という視点で議論したグループもあり、「地元の町内会をうまく活かしたサービスを考案し、地域コミュニティの強化と公共交通の収益化につなげたい」「若い世代や新興住宅地へ人を誘導するようなコンテンツを整備する」などの意見が上がりました。

別のグループでは、ライドシェアを活用してドライバーの担い手不足を解消するという提案も。自動運転技術を実証実験の場として活用し、ドライバーの高齢化に対応できないかという議論も生まれていました。

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地域課題に対する提案発表

フィールドワークとグループワークを経て、グループごとにさまざまなアイデアを提案しました。

●観光客に優しい公共交通の提供
公共交通の収益安定化を図るには、地域住民の利用が主となるが既存収益の拡大は難しいと考え、観光客をターゲットとした外部からの収益で既存のサービスを支える方向で検討しました。具体的には、観光地を結ぶ周遊バスを運航し、観光地の拠点間には民泊施設やコミュニティ機能を兼ね備えたバス停を設置。地域住民をガイド役に登用することで高齢者の活躍の場を創出するというものです。「土日の公共交通の隙間を埋める」「高付加価値・高価格な海外観光客向けサービスを展開し収益を安定化する」といった効果が期待できるとしました。

●拡大町内会代行サービスの提供
「拡大町内会代行サービス」の提供を提案しました。電話でのヒアリングによって住民の日常的な悩みや問題を解決し、町内会や自治会の役割を代行するものです。例えば、移動手段が必要な住民に対しては、地域内の車両とのマッチングサービスを行い、移動の便を提供し、夏祭りの企画運営の支援も行います。会長や役員など既存の町内会の構造は生かしつつ、サポートするという位置づけです。デジタルデバイスではなく、「声」を通じた対話を重視するのも特徴の一つとして挙げました。

●自家用車活用のライドシェア導入
公共交通ではカバーできない地域住民のニーズを「ライドシェア事業」で補完することを検討する案も出ました。地域住民が自家用車を活用して交通困難な他の住民を目的地まで運ぶことで、公共交通が少ない地域から市街地への移動の便を良くしようというものです。市役所の支所と、高齢者の利用が多い病院の位置関係がほぼ同じであることから、市役所勤務の方をモデルケースに運転者登録の実証実験を行うという案も出されました。

この他にも、利用頻度の少ない路線を活用してもらうアイデアとして、お酒を愛する文化を生かしたイベントによる公共交通の利用創出や、シャトルバスの利用範囲を拡大し、海外からの旅行客を対象にした観光周遊サービスをつくるというものなどの提案がありました。

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全体を通しての振り返り

各グループの発表を受け、ご協力いただいた男鹿市の方々、講師からは以下のような振り返りがありました。

●男鹿市の方々から
全体の感想として「いろいろなところから提案は受けますが、いざ『誰がやるのか』という段になると、手が挙がらないことがあります。欲しいのはコンサルタントではなく、実際に動くプレーヤーです。その意味で、『楽しくやりたい』『自分がやりたい』ということを提案していただけたのが良かったです」との評をいただきました。また、「現実味のある提案で、路線の実際の状況や予算までしっかり考えて提案していただいたのも素晴らしかったです」との言葉もありました。

●講師陣から
各グループの発表に対して「デジタルではなく、電話で相談を受け付ける、既存の町内会の役割を損なわないなど、地域の世代や文化を尊重した内容が良かったと思います。『行くのが不便』という場所が逆に価値を生むケースもあります。課題をうまく魅力に転換するという発想も身に着けてもらいたいです」などといったアドバイスがありました。

まとめ

今回のフィールドワークでは、授業終了後もアイデアのブラッシュアップを継続し、男鹿市に再提案するグループも出ています。男鹿市の方々にご期待いただいた通り、授業科目の範囲にとどまらない、実践につながるフィールドワークとなりました。

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