2023.11.27

2日目 「地域課題を解決するビジネスの本質と、アイデアを生み出す手法」

2日目 「地域課題を解決するビジネスの本質と、アイデアを生み出す手法」

さまざまな地域で起こっているイノベーション事例を通し、地域活性の本質を理解する「地域イノベーション」。さらに、「ソーシャルビジネス」では地域ビジネスを行う上での重要な心構えを学び、「アーティスト思考」「アイデア発想法」では、ひらめき脳やアイデア脳を手に入れるためのエッセンスを学びました。

地域イノベーション地域社会に暮らす人々に良い変化を与えるイノベーションの本質

講師:事業構想大学院大学 特任教授 青山 忠靖 氏

「地域イノベーション」と言うと、テクノロジーを駆使して地域に技術革新をもたらすことを想定しがちです。しかし、新しい技術などに頼らずとも新しい価値を生み出そうとしている地域はたくさんあります。青山特任教授は「地域イノベーション」とは「地域社会に暮らす人々の生活(働き、暮らし、教育)に好ましい変化を与えていくこと」だと解説。その事例として、神奈川県座間市にある、小田急電鉄の社宅として利用されていた「ホシノタニ団地」のリノベーションプロジェクト(2015年)が紹介されました。本プロジェクトが成功したのは、「単なる収益化だけを目指すのではなく、地域に住む人々の生活に好循環を創出させようとしたから」と青山特任教授。ドッグランやカフェ、貸し農園などを有した”開かれた駅前団地“として生まれ変わったホシノタニ団地は、確かにテクノロジーを使わずして、地域イノベーションを実現しています。講義の最後には青山特任教授から「問題をあまり大きく捉えるのではなく、小さなところから”こんなことが描けたらいいな”という発想から出発してください」とアドバイスをもらいました。

ソーシャルビジネス社会的な課題を解決しながら地域にワクワク感を

講師:事業構想大学院大学 教授 河村 昌美 氏

「ソーシャルビジネス」とは、ビジネスの手法を通じて社会的なミッションを果たそうとする事業のこと。例えば、石鹸を売る事業で見た場合、従来のビジネスは販売価格を上げて原価を下げて大量生産する「利益の追求」が目的です。しかし、ソーシャルビジネスは、石鹸を誰でも手に入れやすい価格に設定し、公衆衛生の重要性を啓発しながら販売するという「公衆衛生上の問題解決」をビジネスで解決を図る、という違いがあります。

河村教授は、ソーシャルビジネスを事業構想する際、参考になる既存知(材料・事例)を集める手法や参考になるサイトについて、さまざまな地域の成功事例を交えて紹介。また、自身が関わったソーシャルビジネスの事業構想事例として、通信サービスの利用を通じて募る寄付金をこども食堂の支援に充てる「こども食堂応援Wi-Fi ~conneXion for SMILE~」(大阪府枚方市)や、学校と保護者をつなぐデジタル連絡ツール「スクリレ」(横浜市)などの取り組みを紹介。事業構想には「個々人の具体的『不』を解消する」視点と、ワクワクするような「感動を創造する」視点のどちらも必要だと学びました。講義の後半では、受講生から鋭い質問が複数飛び交い、さらにソーシャルビジネスについての考え方を深めました。

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アーティスト思考先の見えない時代を生き抜いていくための思考とは

講師:事業構想大学院大学 特任教授 松永エリック・匡史 氏

自律的な発想法である「アーティスト思考」が重要になってきている背景として、現代はVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高い「VUCAの時代」を迎えているからだというところからスタートした本講義。地球温暖化による気候変動、台風や地震といった災害、新型コロナウイルスの流行など、予想していないことが次々に起きている今、もはやこれからの予測は誰にもできません。これまでは過去を分析して経営に役立てることがほとんどでしたが、これから先の未来、こうした分析は役に立たなくなるかもしれません。だからこそ、直感やインスピレーション、独自の世界観など、「自由な発想=アーティスト思考」が求められているのです。

本講義では「デザイン思考とアート思考はまったくの別もの」という話から、画家のパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって生み出された「キュビズム」の話にも発展。エリック特任教授は「自由で、自分自身のロジックを大切にしていて、自分の思いを形にすることに命をかけている―。これこそが『アーティスト思考』だ」と話されました。最後には「Be Creative and enjoy yourself. Peace out.」というメッセージが受講生に贈られました。

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アイデア発想法前提や枠組みにとらわれないラテラルシンキング(水平思考)に挑戦

講師:事業構想大学院大学 特任教授 奥村 隆一 氏

「ラテラルシンキング(水平思考)」の考え方や技法を知り、その内容と使い方を理解し、新しいアイデアを発想する際にラテラルシンキングを使えるようになることが、本講義の目標。「ラテラルシンキング」とはイギリスのエドワード・デボノ博士が提唱したもので、「解決困難な問題に対し、固定観念や論理思考(ロジカルシンキング)では到底思いつかないような解決策を生み出すための発想法」のことです。既成概念や常識の枠を外して、多角的にとらえて自由に発想し、多くのアイデアを出していくことで、思考の幅を拡げます。

実際、近年は、これまでの前提や枠組みにとらわれない新たな発想が求められる場面も増えていて、それによって成功したビジネスも数多くあります。つまり、ラテラルな思考を習慣化できれば、地域イノベーションにつながる力を身につけられるということです。奥村特任教授はラテラルシンキングにつながる考え方や手法も解説。ラテラルシンキングに必要な「前提を疑う思考」や「抽象化する力」などを深く理解するための個人ワークも取り入れられ、実践的な思考法も体験しました。

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まとめ

実際に成功している地域の事例をもとに、イノベーションの力や本質、心構えについて理解を深めた2日目。すぐにでも実践・活用できる「アーティスト思考」や「アイデア発想法」を前に、感心しきりの受講生たちでした。

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