2025.12.6

「点」から「面」——SAの成功を街全体へ

「点」から「面」——SAの成功を街全体へ

サービスエリア「セデッテ鹿島」の成功を源泉にした未来構想

常磐自動車道にあるサービスエリア(SA)「セデッテかしま」は、年間150万人が訪れる県内でもトップクラスの施設です。ここは元々NEXCO東日本がガソリンスタンドとトイレを設置する計画だったところを、市が積極的に関与して商業施設部分を整備したという経緯があります。行政がリスクを負い未来に投資したことで、単なる休憩施設ではなく一大商業拠点という性格を持たせ、大きな成功を掴んだのです。
参加者は到着して早々、綺麗に整備された施設と、魅力あふれる地産品が並び、地元住民の方々の憩いの場にもなっている「セデッテかしま」の賑わいに心躍らせました。

その一方で、南相馬市は、SAの成功から生まれた課題へ、新たな挑戦の歩みを始めていました。その課題とは、「セデッテかしま」の成功が、南相馬市全体から見ると、一つの「点」にとどまっていることにあります。本来、この地はジュラ紀と白亜紀の両方の地層から化石が産出される国内でも極めて貴重な地域であり、平成以降だけで12種もの新種が発見され、市内各所で恐竜の足跡化石も見つかっているという、世界に誇れる物語が足元に眠っています。しかし、現状では来場者の消費と関心はこのサービスエリア内で完結してしまい、街まで賑わいを波及することができていません。実際、参加者は一歩外へ出ると、街とのつながりの弱さを肌で感じました。

サービスエリアの関係者以外の人々が収入をあげられる仕組みづくり、また南相馬市全体の賑わいづくりの実現が、復興の新たなステージへ進むのに不可欠となりそうです。

副市長と共に南相馬市を徒歩やバスで移動しながら、この土地ならではの魅力に触れ、圧倒的な賑わいをどうやって街に波及させるか——。参加者は思考を巡らせました。

グループワーク

グループワーク冒頭では、副市長より、SA拡張の「まちを創るサービスエリア」構想の説明を聞きました。それは、単なる「通過地点」としてのSAではなく、「目的地」となるSAへの進化の構想でした。参加者はその壮大なビジョンに真剣に耳を傾けていました。

その構想は、南相馬市の魅力を凝縮したような内容です。例えば、南相馬市が誇る野馬追の伝承館と馬とのふれあいの場、市内での発掘が期待されるジュラ期の恐竜化石にちなんだエリア、未来に想いをはせる宇宙・ロケット産業関連のエリアなど、歴史・文化・先端技術を横断して楽しめるコンテンツが盛り込まれていました。その他宿泊施設もあり滞在型のSAを目指す構想でした。

今回、参加者にはSAを起点に、街中にどうやって賑わいをつなげていくのかというテーマが与えられ、市内での観察などを元にグループに分かれ意見交換を行いました。

参加者は、構想に馬のいるエリアが含まれていたことに加え、副市長が語った野馬追の朝練の美しさ、移動中に馬を飼う民家を数多く見かけたことなどを手がかりに、この地にいまも「馬と共に生きる文化」が息づいているという唯一無二の魅力を共有しました。

あるグループでは、馬が公道を歩いていても不思議ではないこの地ならではの発想で、「街中に人がいないなら、移動そのものを目玉にすればいい!」といった意見や、「馬でコンビニに行ったら最高に楽しいよね」 といったワクワクするアイディアが飛び交いました。

課題に対する提案のまとめ

1.「馬がいる日常」構想

家族の一員としての馬という文化を、外部の人に伝え、深く体験してもらうことに焦点を当てた提案。

  • 「馬の分布図」による情報発信:南相馬市にはG1で活躍を見せた有名馬が余生を送っているという実態があることに着目し、どの馬がどこにいるのか一目でわかるマップを作成し、競馬ファンの来訪を促す。
  • アテンドツアー型「馬の日常体験」:2泊3日程度の滞在型ツアーを行う。単なる観光ではなく、馬を飼育している一般家庭に入り込み、朝3時からの世話や手入れといった「日常の努力」を共に学ぶ。
  • 農家民泊と「朝練」体験:既存の宿泊施設ではなく、馬のいる家庭への民泊を推進。岩手県遠野市の事例を参考に、朝の海岸での調教(朝練)に同行できるような、ありのままの暮らしを体感できるプログラムを構築する。
2.「うまいい街」構想

この班は、サービスエリア(SA)を起点に、街全体を回遊させる仕組みや、ビジネスとしての採算性を重視した提案を行っています。

  • 街中ホーストレッキング:SAから街中の観光スポットを馬に乗って巡る、非日常体験の提供。車ではなく馬でコンビニや商店へいくスタイルを提案。
  • ウマ娘とのコラボ「推し活」:人気コンテンツとのコラボレーションや、自分が世話をした馬の成長を確認しに来る「推し活」の仕組みづくりでリピーターを獲得する。
  • 馬小屋付きコテージ(疑似お世話体験): SA拡張エリアに、馬小屋が併設された宿泊施設を設置。夕方の餌やりや朝のブラッシングなど、宿泊者が自分で馬を世話する「体験」を提供し、馬への愛着を育てることで、この地への愛着も育てる。

1班は、「既存の馬主家庭への入り込み(民泊・深い交流)」という内発的・コミュニティ重視の提案であるのに対し、2班は「SAを起点としたトレッキング」という外発的・観光開発重視の提案となっている点が特徴的です。

各グループの発表後は、副市長の他、市職員の方々からフィードバックをいただきました。

馬を飼育している家庭に入り込む体験については、「街の文化を理解する上で非常に有効」と語られました。また、市民自身も気づいていない生活の価値を外部に発信する面白い取り組みとして評価されました。
公道を馬が歩く、「街中ホーストレッキング」については、他にはない圧倒的な差別化要因になり得ると期待を寄せられました。ここに物語性を持たせると尚いいという意見も出ました。一方、馬の排泄物処理という現実的な課題については、教授より「シルバー人材の活用」という具体的な解決策が提示されるなど、現実的な運営の示唆もありました。

今回の提案は、南相馬市に脈々と受け継がれる「馬と共に生きる」 という文化の本質を捉えたものでした。1000年以上続く野馬追の精神——それは単なる観光資源ではなく、日常に根付いた暮らしの 一部です。その価値を外部の人々と共有することで、南相馬は 「訪れる」場所から「関わり続けたくなる」場所へと変わっていく。 そんな可能性が垣間見えた一日となりました。

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