きたかみ朝市を活用した都市の再生プロセスを考える
北上市の都市再生の背景にある問題意識
北上市では、新幹線駅周辺や幹線道路沿いで、ホテル建設、病院建設、工科大学の構想、再開発事業など、大規模なハード整備が進められています。しかし、「老朽化した建物を壊し、新たな建物を建てるだけで都市(まち)は再生できるのか?」という根本的な問題意識を持っていました。
まちの主役は「人」であり、その活動の総体がまちであると捉えている北上市。そのため、ハード整備だけでなく、「まちに人がいる状態・仕掛け」や「まちを主体的に動かす人・団体」を作るソフト整備(エリアマネジメントの推進)がミッションとされました。
しかしながら、民間(商店街)側は、新たな価値作りや空きテナントの活用などのまちづくりに対して「諦めモード」が蔓延している状況が続いています。
この状況を解決するための手段の一つ、「きたかみ朝市」に期待が寄せられています。
3年間の取り組みを経て出てきた課題感である「行政依存からの脱却」「持続的な運営体制」「事業拡大への障壁」「地元商店街との連携」「不動産活用」などについて、参加者はグループワークにて解決の糸口を話し合いを行いました。
グループワーク
フィールドリサーチと市役所職員からの事前説明を受け、参加者と教授陣、そしてきたかみ朝市の関係者が全員一同にこの課題について議論を始めました。
まず、「人」が大事であるという想いを持ちながら、街の方々に上手に伝えられていない現状の課題が見えてきました。
その背景には全て運営者側で考え、提供しようと努力してきたが、それにより時間と労力が奪われ、限界を感じているという状況がありました。
そこで、「全部運営側でどうにかしようとするのではなく、もっとオープンに一緒に考えようという姿勢を見せることが必要ではないか」という意見が上がりました。
「地域に関わりたい人はたくさんいるが、その方法がわからないでいる」「受け皿を作ることで、まちづくりに関わりたい住民は集まる」と、まちづくりに長年関わってきた参加者からの説得力ある声が上がりました。具体的に、栗原市の六日町商店街(宮城県)や、長町商店街(宮城県)の成功事例が挙げられました。
多くのアイディアを振り絞り脳も疲れてきた頃、参加者は甘いお菓子でエネルギーチャージ。頬張ったのはフィールドリサーチ中に出会った、諏訪神社の向かいに店を構える老舗の菓子店「栄泉堂」の「デデスコデン」です。見た目はまんじゅう、中身は洋菓子。意外性と何よりもそのおいしさに一同が驚く場面も。「高級なデパートに置いてありそうだ」との意見に、皆満場一致し、参加者はこれも北上市の「資産」であると感じていました。
課題に対する提案のまとめ
1. 運営体制と事業規模の転換に関する提案
現在抱えている行政依存やスタッフのモチベーション格差、目標の曖昧さといった課題を解決し、民間主体の持続的な運営体制を構築するための案が提案されました。
• 街づくり会社の設立:民間主体の持続的な運営体制を構築するため、まずは街づくり会社を設立する。
-その幹部として、不動産屋、デザイナー、建築家など、まちづくりに熱意のある人材を5人程度集めることが提案されました。
• 開催場所と回数の見直し:現在の商店街の場所は飽きられている可能性があるため、場所にこだわり過ぎず、公園 や寺の門前 など、解放感があり集客が見込める場所へ会場を変更することも検討する。また、毎月開催(月1回)では飽きられる可能性があるため、開催回数を減らし開催の価値を上げる。
そのほか、目標集客人数の大幅引き上げ、ビジョン(リアルな数字)の提示、危機意識の共有が提案されました。
集客の目玉を創出し、特定の層を巻き込むための具体的な案が提案されました。
- 北上独自の「名物」開発:集客の目玉とするため、朝市の中心メンバーがプロデュースし、北上独自の新しい名物を開発する。
-具体的なアイデアとして、「きたかみ朝市チャージバーガー」 や、地元産のそばを活かした「朝のしずくそば」 が挙げられました。 - 「夜市」への転換検討:昼間は人が歩いていないが、夜は賑わっているという現状を踏まえ、夜市として開催を検討する。
-これは民間側が投資し活発化している夜の街(青柳町など)の活力を活かす狙いがあります。 - 「手作り市」の導入:宮城県仙台市の薬師堂の事例(3,000人規模の集客)を参考に、女性の出店と集客を狙う、手作りのマーケットを開催する。
- 「健全なスナック」の導入:流行している「街のスナック」を参考に、夜の賑わいを担う業態や、多様な人材が地域活動に参画するヒントとする。
そのほか地元の農産物と食のコラボレーション、 朝の体験コンテンツ(ヨガやストレッチ)、パワーのある店の誘致が提案されました。
空きテナントの解消と、活動主体となる人材を増やすための案が提案されました。
- 地域おこし協力隊の導入:空き店舗の解消を目指し、地域おこし協力隊を導入する。
-これは宮城県栗原市の六日町通り商店街の成功事例を参考にしたものです。 - 人材育成の実施:商店街のリーダー育成のため、「先進事例の見学やディスカッション」 を組み込んだセミナーや勉強会を実施し、街づくりへの意識とモチベーションを高める。
-具体的に直近の開催場所の案内などがされました。 - 起業塾の開催:近年、地域活性においてトレンドとなりつつある起業塾を、夜の街が元気な北上市らしく「夜の飲食店の起業塾」として開催。実際にお店を営んでいる経営者に、運営のリアルを話してもらう。
-参加者は経営者の話を聞くことで、実践知を得るだけでなく、そのお店の背景を知ることで愛着が沸き、そして講師をする経営者にとっては、認知されることでお店に足を運んでもらうメリットが期待されます。飲食店、それも「夜の飲食店経営者の話」を聞くことのできるものは稀でユニーク。これが北上ならではのコンテンツになり、人が人を呼ぶ効果もありそうだと意見があがりました。
そのほか転勤族や学生の巻き込み(地域活動への参画を促す)や、岩手県が行っている「遠恋複業」の活用などが挙げられました。
参加者は座学で学んだ「地域構想力」を活かし、現地で生の声を聞き、課題に対し正面から向き合いました。活発に多くのアイディアが飛び交った今回。それも、北上市がもともと持つ魅力を発見できたという手応えがあったからではないでしょうか。会場には参加者全員から「魅力をもっと発信したい」という想いで溢れ、熱気に包まれていました。
提案を受けた関係者の皆さんからは、「これまで作り上げてきたものを変えていくのは怖い部分もあるが、必要だとわかりました。」「課題をオープンにし、一緒に作っていこうという姿勢を伝える場(受け皿)を作ることが必要だということがわかりました。」「今は希望で胸がいっぱいです」という声を聞くことができました。